食トレmagazine 第10弾(公立学校特集) 富島高校 | メディケアスポーツ
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食トレmagazine 第10弾(公立学校特集) 富島高校

宮崎県 富島高等学校
打撃練習では、食トレ効果の一つである飛距離の伸びを実感できる
コーチの話を真剣な眼差しで聞く選手たち
小さめで練習の合間に食べやすいサイズのおにぎりは選手にも好評だ
当番制でおにぎりをつくるマネージャー。練習のサポートや測定数値の管理など、多くの仕事をこなす縁の下の力持ち
ミーティングではメモ取りも欠かせない。その内容は技術面だけでなく多岐に渡る
甲子園連続出場を目指して、1・2年生には熾烈なレギュラー争いが待っている
濵田監督は「卒業しても食トレの経験を生かしてほしい」と3年生にエールを送る

地道に積み重ねた食トレが
選手の何よりの自信に

指揮を執り10年目を迎える濵田登監督のもと、3年ぶり2度目の甲子園に出場した富島高校。プレーと数値で自身の変化を実感できるからこそ、積極的に食トレに取り組むことができる。さらなる高みを目指し、チームは進化を続ける。

コロナ禍を乗り越え 掴んだ甲子園の切符

 選手よりも早くグラウンドに集い、まずはお米を洗う。濵田登監督が「野球部の顔」と言い切るマネージャーの仕事は、補食のおにぎりづくりから始まる。2升のお米が炊き上がると、ラップで包みながら黙々と形を整え、愛情のこもったおにぎりの出来上がり。飽きないようにと、数種類のふりかけを常備する心遣いも忘れない。選手たちは練習の合間に、次々とそのおにぎりを頬張り、またグラウンドへと戻っていく。
「うちは練習メニューの一環として、補食や栄養を補助する強化食を取り入れているので、選手によってバラつきが出ることはありません」と話す濵田監督。ただ、コロナ禍では活動時間に制限がかかり、難しさもあったという。

野球部・監督
濵田 登 (はまだ のぼる)

1967年生まれ。宮崎県出身。母校の宮崎商で監督を務め、2008年に甲子園出場。13年に富島に赴任し、18年春、19年夏、そして今夏3年ぶりに甲子園に出場した。

「体重が落ちる選手はいませんでしたが、増加は緩やかになりました。トレーニングの量が減り、食事だけに頼っていても筋肉量は増えません。トレーニング、強化食、休息のバランスが重要です。そのバランスが崩れたら、効果は半減してしまいます」。
 全体練習のできない期間には、モチベーションを保つのも難しかった。それでも「県大会を勝ち抜けたことは価値があった」と、甲子園出場を噛み締めた。

心技体のバランスを整え 全国の舞台で躍動を

 富島高校硬式野球部は、創部74年目を迎える。2022年、3年ぶり2度目の甲子園では、一回戦で下関国際と対戦。初回に先制を許し、「流れを変えられなかった」と0対5で敗れた。それでもエースの日髙暖己は162球完投。「最後まで投げ抜く体力がついた」と日髙自身が語るように、食トレの成果が表れた。これから歩むプロの世界でも、必ず役立つだろう。
 戦うからには、もちろん勝利を目指す。ただ、「それだけでは偏りが出てくる」と考える濵田監督は、バランスの大切さを説く。
「公立校として勉強の大切さもしっかりと伝えます。そして、心の教育、技術の習得、身体のケアも必要です。結局は心技体のバランス。『心』がベースにあり、その上で『技』と『身体』があると思っています」。

さらに、甲子園出場を目標にするのではなく、そこで勝利するために必要なことを日々意識して練習することも重要だ。それには「連続出場して、選手が経験を積むことも大事」と付け加える。
 また、食トレに関する新たな課題も見つかった。甲子園期間中は、普段通りの食生活を送ることが困難だ。ホテルで補食のおにぎりを準備するのも難しい。「選手のストレスに繋がることもあります。衛生面も含めて、今後の課題ですね」と濵田監督。ただでさえ緊張する大舞台。「いつも通り」が全国初勝利へのカギになりそうだ。

食トレ効果で投球内容の変化を実感

3年・投手
日髙暖己くん

Q.食トレを取り入れて変化したことは?

以前は3食でお腹いっぱいにしていたけど、朝食と昼食の間にお腹が空いてしまう。空腹は筋肉の減少に繋がるので、必ず補食をとるようになりました。

Q.食トレを取り入れて変化したことは?

以前は3食でお腹いっぱいにしていたけど、朝食と昼食の間にお腹が空いてしまう。空腹は筋肉の減少に繋がるので、必ず補食をとるようになりました。

Q.食トレを取り入れて変化したことは?

以前は3食でお腹いっぱいにしていたけど、朝食と昼食の間にお腹が空いてしまう。空腹は筋肉の減少に繋がるので、必ず補食をとるようになりました。

未来に繋がる食トレは 周囲のサポートが不可欠

 なぜ、食トレを行うのか。富島へ赴任して10年目となる濵田監督に、改めて問いかけてみた。
「第一に身体づくりのため。それから、いかにケガをせずにベストコンディションで練習させるかに重きを置いています。選手全員にマッサージをしてくれるトレーナーの存在も大きい。それで調子の良し悪しも把握できるので、慢性的なケガは防げています」。

 兄弟揃って富島野球部という選手も少なくない。3兄弟の安藤希空くんは「2人の兄の身体がどんどん変化するのを見て、すごいなと思っていました。実際にやってみると、慣れるまでは食べるのがきつかったです」と苦笑い。2学年上に兄のいる高橋正道くんは「食事は空腹を満たすだけでなく、食べるタイミングや順番も大切だと学びました。チーム全体で同じ取り組みをしますが、量や食べ方は人それぞれ」と教えてくれた。選手たちは「打球の飛距離が伸びた」、「体力を消耗にしにくくなった」と口を揃える。月に一度行うインボディ(体成分分析)測定では、筋肉量やタンパク質量、ミネラル量などを数値で把握できるため、モチベーションにもなっている。

 過去には、保護者と共に調理実習を行っていた。「料理がどれだけ大変か、子どもたちも実感することができる」との理由からだ。
「食育の一環でもあると捉えています。何を食べれば効果があるのかを知ることは、自分や家族の健康を守ることにも繋がります。将来、一人暮らしを始めたときにも役立つはず。便利な世の中になり、コンビニやスーパーで出来合いのものは買えますが、食トレを通じて、おふくろの味をいただくのも重要です」。
 選手自ら理解を深め、保護者のサポートを得て成り立つ食トレ。この経験と知識が、豊かな未来へと繋がっていくだろう。

所在地 宮崎県日向市鶴町3丁目1−42 学校設立 1916年
直近の戦績 2022年•県大会優勝、夏全国高校野球選手権2回戦
close up supporters

2人のお兄さんも食トレを経験
バランスよい食事でサポート

日髙リカさん
(日髙暖己くんのお母さん) 
日々の食事で心がけていることは?

肉、魚、野菜が偏らないようにしています。親の好き嫌いが影響して食卓に並ばないメニューもあったのですが、子どものためにも幅広く作るようになりました。

お弁当づくりで工夫したことは?

3リットルのタッパーに、おかずは少なくとも5品。メイン、副菜、デザートも添えます。食欲の減る夏場でも量が減らないよう気をつけていました。

食トレを通して感じたことは?

子どもたち自ら、食に対して高い意識を持つようになりました。積極的に牛乳を飲むなど、これまで少なかった乳製品をとるようになってよかったです。

取材・文:古江美奈子 写真:筒井剛史
掲載内容に関しては制作時の情報となります。