食トレmagazine 第10弾(公立学校特集) 加古川西高校 | メディケアスポーツ
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食トレmagazine 第10弾(公立学校特集) 加古川西高校

兵庫県 加古川西高等学校
正確性が高くスピード感のある守備練習。ファールゾーンには「お花係」が育てている可愛らしい花が
校舎に隣接するグラウンドを他の部と共用しながら練習に励む
太くて重いロープを使った筋力トレーニングで汗を流す
廃バットを利用したスイング練習。飛んでいくバットの軌道や角度などから課題を探る
水を8分目まで入れたポリタンクを勢いよく持ち上げると、中の水が不安定に動き、筋肉が刺激される
練習中も空腹を満たしエネルギーを補充するためおにぎりにかぶりつく
限られた時間とスペースを有効活用するため各メニューをローテーションで行っていた

食トレと筋力強化で
強豪校に勝つ自信を得る

2022年夏、兵庫大会で「カコニシ旋風」が吹き荒れた。ノーシードから強豪私立を次々と下し6連勝。150校以上がひしめく激戦区を準決勝まで勝ち進んだ。文武両道を志す普通科公立校の加古川西高校が取り組んだチームづくりに迫る。

「毎日の積み重ね」が〝旋風〟を起こす

 150を超える参加校の中から3校もの公立校が4強入りを遂げた今夏の兵庫大会に、高校野球ファンは目を釘付けにされた。
 長田とともにノーシードから勝ち上がった加古川西は、初戦で昨夏準優勝の関西学院高校を5対2で打ち破り、準々決勝では優勝候補の滝川第二高校をわずか1失点に抑えた。6試合で計38得点を挙げた攻撃力で、1990年以来32年ぶり2度目の県大会準決勝進出を果たしたのである。その快進撃は〝旋風〟と称され、21世紀枠推薦校として今春果たせなかった初の甲子園出場まであと一歩まで迫るものであった。

野球部・監督
吉本純也 (よしもと じゅんや)

1973兵庫県加古川市生まれ。加古川西から天理大へ進学。県外私立、県内他校勤務を経て、2020年に母校の監督に就任。保健体育科教諭。

2020年から同校を率いるOBの吉本純也監督は「野球って、10の力を持った学校と、6の力しかない学校のどちらが勝つかって言われたら、必ず10の方が勝つ競技ではないんです」と言い切る。では、力が劣る公立校が試合を制するにはどうすればいいのか。「打率はその時の調子で良い時と悪い時がありますが、食トレや筋力トレーニングは毎日の積み重ね。その結果が試合で発揮されるんです」と話し、前任校の姫路南時代から用いている食トレと独自のトレーニングによる選手の体力づくりについて明かした。

筋力強化と食トレで強豪校に勝つ自信を持つ

「中学生の時から身体がデカい子は私立へ進学しますが、公立にも背が高い子は何人もいます。トレーニングと食事で身体を大きくして、難しい事ですが『強豪校に自分も勝つんだ』という自信をつけるんです」。
 ウエイトトレーニングではなく、タイヤやポリタンクなどを駆使した独自のトレーニングで負荷をかけ、食トレによって必要な食事量と栄養素を確保することで、筋肉量増加や筋力強化に取り組んでいる。

 32年前に同校が初めて県大会4強入りした当時、高校2年生だった吉本監督は1番・三塁手としてメンバー入りしていた。「わたしらの感覚では、私学はほんまに強かったんです。でも、夏の大会で対戦してみるといけた。わたしは当時の先輩たちに(ベスト4まで)連れて行ってもらっただけですが、私学と良い試合ができたんです。指導者になってみて、さらに『甲子園は決して夢じゃないよ』と思えるようになりました」と母校の後輩たちへ夢を託す。
 公立校では教職員の人事異動による繫栄や衰退が起こりやすい。しかし同校は8年前から食トレを取り入れ、右肩上がりに成長中だ。前任の山本陽平監督が率いた3年前はノーシードから報徳学園や市立尼崎などの強豪校から勝利を上げ8強入り。吉本監督就任後の昨秋の県大会でも8強入りし、継続的に好成績を残している。その結果、今春、1948年創部以来初めての21世紀枠推薦校に選ばれた。7時15分からの朝練を終え、8時から全員で朝食をとり、昼食までに補食。トレーニング前にも補食や強化食を口にしている。「今の子らは体格では負けてないですよ」と、指揮官は白い歯を見せた。

激戦区を勝ち抜ける体力がつきました

3年・主将・外野手
茨木琉之介くん

Q.どのくらいのご飯を食べてた?

朝昼夜にそれぞれ2合のご飯と、1日5つのおにぎりを食べていました。合計7合です。最初はお腹に入らなかったけど、お茶漬けにしたり工夫して食べました。

Q.食トレで学んだことは?

身体を大きくする方法だけでなくて、何を摂取したら筋肉がついたり柔軟性が高まるのか、骨を強くするための栄養は何かなど知ることができました。

Q.成長を実感している?

1年の頃より10キロくらい体重が増えたので食トレの効果を実感しています。

仲間と競争意識を持てば食が進んで身体がつくれる

 元主将の茨木琉之介くん(3年)は「全員で同じことを意識すると自分にも仲間にも火が付くんです。野球だけじゃなくて食事でも、全員で『負けてられん!』と思いながら取り組んでいました。体重がどれだけ増えたかや、補食の多さ、おにぎりの個数など、みんなで競い合って頑張れたと思います。(体重や体脂肪率などの数値が分かる)測定日はすごくワクワクしてました」と語り、「食トレリーダー」を決めて切磋琢磨した仲間との日々を思い返した。

 念願の甲子園初出場まであと一歩とした今夏、同校に足りなかったものはなんだったのか。吉本監督は「準決勝以降の体力が持つかが不安でした」と吐露した。4回戦以降は中1日での連戦だったが、準々決勝では滝川第二に6度も3塁への進塁を許しながら初回の1失点のみに抑えて粘り勝ち、春夏通算8度の甲子園出場を誇る神戸国際大附属との準決勝は延長12回に及ぶ激戦を繰り広げた。「トレーニングや食べ物でもっと強い身体をつくって、もう一段上の体力をつけなければ」と来季へ意気込む。

 吉本監督は甲子園出場に必要な要素としてもう1つ挙げた。
「技術を高めるだけではダメ。最後の最後は形が崩れてもヒットになるし、綺麗な形でも空振りになります。甲子園は、甲子園から呼んでもらえるような強さや技術や体力や人間性など、いろんな面が整わないと行けない場所です。つまり、最後は形じゃない。〝人〟が重要なんです」。
聖地に相応しい球児になれるよう努力を積み上げていく。

所在地 兵庫県加古川市加古川町本町118 学校設立 1912年
直近の戦績 2022年夏•県大会準決勝
close up supporters

1日3食を有効活用して
元気な学校生活を望む

茨木美保子さん
(元主将・茨木琉之介くんのお母さん)
息子さんの変化は?

得意じゃない納豆を「買ってきて」と言うようになりました。小、中学生のときはケガが多い子でしたが、高校ではケガが少なく、引退までやってこれました。

日々の食事での工夫は?

働きながらのサポートはとても大変なので、親同士で情報交換をしながら、暑い季節の味噌汁や、季節に応じた鍋料理なども取り込みながら料理していました。

食トレを支え終えて一言。

成長期にただお腹を膨らませるだけの食事をさせるのではなくて、勉強や練習と同じで、1日3回の限りある食事をいかに効率良く使えるかが重要だと思います。

取材・文:喜岡 桜 写真:齋藤友也
掲載内容に関しては制作時の情報となります。