食トレmagazine 第10弾(公立学校特集) 中村高等学校 | メディケアスポーツ
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食トレmagazine 第10弾(公立学校特集) 中村高等学校

応援してくれる地域の人たちがくれたお米を余すことなく握っていくマネージャー
屋内練習場に高く掲げられた同校の甲子園初出場準優勝の栄光の下、練習に励む選手たち
この日は周辺地域の高校が集まり中学生へ向けた「硬式球を楽しむ会」が開かれていた
「ボールに当てるのではなくしっかり振り抜く」。軟式球との違いを中学生へ教える
練習前に腹ごしらえ。地元中学出身の選手ばかりなので12人全員とても仲が良い
中学生への指導を通して、初心や基礎を思い出すことができ自分の成長にもつながる
取材当日にマネージャーが握ったおにぎりのうち2個だけハートの形になっていた

野球と食事による人間教育
勝てる選手は家庭で育つ

甲子園初出場準優勝から45年。たった12人の部員が健闘する姿は「二十四の瞳」と称えられた。中村高校は今も、県大会8強以上へ頻繁に食い込む実力校だ。少人数でも強くなれる。その理由は食事を軸とした指導にあった。

地場の少数球児を強くして勝ち上がる

 学校のグラウンドでの練習は火曜日と木曜日だけ。少し離れたところにある屋内練習場は、今は四万十市の管理下にあり、野球部が連日使える専用施設はない。それでも県大会では上位へ躍進する。特に2015年の横山真哉監督就任以降は珍しいことではなくなってきている。

 指揮官は「昔よりパワーやスピードが上がった私立には、同じ部員数を揃えて、同じ練習をして、レギュラーにはたくさん打たせるような〝足し算〟の指導ではもう勝てないんです。必要なのは〝掛け算〟による相乗効果です」と説明する。
 取り入れた強化要素の1つが食トレだ。就任した年の秋季大会では、7年連続で夏の甲子園出場中だった明徳義塾を決勝で下し、40年ぶりの県大会優勝を飾った。翌年は、準優勝した「二十四の瞳」フィーバー以来40年ぶりに甲子園に出場。「食トレが全ての土台になっていますよ。メンタルトレーニングや、保護者との繋がりもそうです」と母校での指導を噛み締めた。

野球部・監督
横山真哉 (よこやま しんや)

1962年高知県土佐清水市生まれ。明治大を卒業後、1986年に母校の中村へ赴任。1989年から監督を5年間務める。他校勤務を経て、2015年に母校へ復帰。社会科教諭。

ケガ予防と早期回復は食トレの効果

 「食トレは前任校でもやっていて、中村でもすぐに保護者へ説明をして始めました。5年前に甲子園へ出たチームは16人。その翌年は14人。今は12人です。うちはケガをしたら終わりなんでね。そうかと言って、厳しい練習を怠るわけにもいきません」。
 同校は県西部に位置し、県庁所在地の高知市から車で片道2時間はかかる旧郡部校。深刻な少子化に加え、野球が上手な選手は高知市近郊の強豪私立へ進学してしまうため、部員数を確保するのが難しい環境なのだ。故障した人数次第では出場辞退を余儀なくされる。だからこそ強い身体が必要だった。「トレーニングでも強い身体づくりはできるんですが、ケガはしてしまうものです。食トレで強くした身体は、ケガが防げるだけでなくて治りも早いんです」。

 横山監督が特にそう感じたのは、5月末に足首を骨折した3年生の事例だ。夏の大会までに治らないと医者に断言されたにも関わらず、ギブス生活やリハビリを予定より早く終え、最後の夏までに完治できたのだ。横山監督は「食トレ効果以外のなにものでもない」と語気を強めた。
 今夏の県大会はノーシードから4強入り。準決勝では選抜へ出場した私立・高知高校に3対4でサヨナラ負けを喫したが、9回裏二死、勝利まであと一球に迫る戦いを展開した。
「最後の一球で負けたけど、それ以外は負けていなかった。野球は不思議と、表と裏がすごく連動しているんですよね。ピンチがあったらチャンスがあり、攻めと守りが対になっている。コロナ禍になって、全体練習など表の部分が減り、食事やトレーニングなどの裏の部分が増えました。みんなで集まれなくても、見えない裏の部分をしっかりとして土台ができた。技術に相乗効果が生まれたことで結果に繋がったと思います」。

朝昼夜のご飯の量を見直して、目標へ前進

2年・主将・外野手
弘内 佑くん

Q.食トレではどういったことを?

入学時点で目標体重に近かったんですが、夜に食べる量が多くて体脂肪になっていたので、朝500g、昼500gに増やして、夜は350gに減らしました。

Q.変化を感じたのはいつ?

1年秋から3月にかけて体脂肪率が下がってきました。体重を維持したまま体脂肪を減らすことで筋肉が増えるので、打球の伸びが変わりました。

Q.どんな身体になりたい?

下半身が太いのでクラスメイトに「ごついな」「太すぎや」と言われます。目標は筋肉量が多くてごついけど柔らかい浅野翔吾選手(高松商業)です。

親子の会話増加で素直な人間育成

 好成績を残した世代の共通点を聞くと「素直さ」と即答した横山監督。以前はスパルタ指導を行っており、目の前で相当な練習をさせていたという。しかし、技術を磨くだけでは県大会を勝ち上がれないことを痛感。約40年に渡る指導実績を通し、横山監督が〝裏〟と表現し続けるトレーニングや食トレなどの地道な成長法に対し、素直に取り組める人間性が技術力向上の根幹にあると導き出した。そして、素直な人間育成のためには、家庭の協力が必要だ。
「うちは遠方の子は寮に入るけど、部員全員が県内出身です。親元を離れると親への感謝が沸きますが、公立校は生徒が親のありがたみに気付きにくい環境なんです。でも、日々の食トレで子どもと親が繋がってありがたみを理解できると、家庭生活に土台(安心感や居場所)ができて、素直な子が育ちやすくなるんです」。

 食事量を増やしサプリメントで補うことは、今やどの学校でも当たり前になっている。一方、食トレは専門家による管理と指導の下、親子で目標を掲げて取り組む。帰宅後、食事を用意してくれる保護者へ指導内容の共有を行うことや、食卓で長時間かけて食事をすることで、在宅時における親子の会話が増える。横山監督は「野球と食を通した人間教育ですよね」と食トレの意義を短くまとめた。
 2回の甲子園出場歴がある同校だが、横山監督は「夏は行けていないのでね」とポツリ。少人数野球部とそれを支える保護者の強い結束力で、2度目の自力出場を目指す。

所在地 高知県四万十市中村丸の内24 学校設立 1900年
直近の戦績 2022年夏•県大会準決勝
close up supporters

食トレで好き嫌いがなくなり安心
バランスよい食事でサポート

弘内美恵さん(左)
(外野手・弘内佑くん
のお母さん) 
森本恵美さん(右)
(内野手・森本圭一くん
のお母さん)
日々の食事で気を付けたことは?

お菓子や甘い物など糖分を控えて、チーズなどを食べさせていました。白米も量が多いので、お茶碗からボウルへ容器を変えました(森本さん)。

お子さんに生まれた変化は?

ビタミンを摂るために好きじゃなかった野菜を自分から食べるようになりました。今では「お母さん野菜少ない」とダメ出しされます(弘内さん)。

ご飯を食べているときの様子は?

1時間くらいかけて晩ご飯を食べています。朝も家を出るギリギリまで。その分、トイレも長いです(弘内さん)。うちもずっとトイレにいます!(森本さん)。

文:喜岡 桜 写真:山田 次郎
掲載内容に関しては制作時の情報となります。