冬の食トレ成果を出す5ステップ | メディケアスポーツ
食トレマガジン — 高校球児の戦える体をつくる必読マガジン —

冬の食トレ成果を出す5ステップ

夏の戦いはすでに始まっている!
冬の食トレ
成果を出す5ステップ

身体作りはオフシーズンが勝負!3月を過ぎたらもう間に合わない

 一般的な体格の場合、この4カ月間は細かいことはさておき、身体を大きくすることに専念する。実際、関東地区にある某強豪校では、4カ月で10キロの増量を目標にしている。ただし、3月になったら揚げ物を封印し、筋肉量を落とさずに体脂肪を落としていく。そうすることで、一気に身体を変えるのだ。

食トレの旬はオフシーズンである。公式戦が終了した後の11月から2月いっぱいの4カ月間、いかに身体を大きく育てることができるかで夏が決まる。なぜならば3月になるともう試合に向けて身体を絞っていかなければならない。さらに体重を増やしてしまうと感覚が狂ってしまうのだ。

 1年生で目標をクリアできなくても諦めないように。消化吸収能力は鍛えられ、2年生のオフシーズンにきっと実を結ぶだろう。折しも2023年には低反発バットが導入され、今まで以上にパワーが必要になるタイミング。夏に化けるか否か、その戦いはすでに始まっているのだ。

自分を知る
筋力アップ
スタミナアップ
ケガ予防・免疫力アップ
睡眠の質を高める
STEP1

現在地を正しく知らねば理想には至らない

自分を知る

単に身体を大きくすればいい?
もしかしたらそれ、間違いかも

食トレをスタートする前にまずやらなければいけないのが、現状把握である。あなたがもし「とにかく食べて身体を大きくすればいいんだろ?」と思っているならまずい。中には身体を絞らなければいけない場合もあるからだ。
まずは、今現在の体格が理想の体重や体脂肪率と比べて、多いのか少ないのか、どのくらい差があるのかを正しく理解しよう。その上で、バランスのいい食事をベースに夏に向けた効果的な食トレ計画を立てよう。もう1つ、体質の見極めも肝心である。同じように食べていても夏場に体重が落ちてしまうタイプの選手もいるからだ。これまでの体重変遷を振り返り、自分のタイプを割り出そう。

STEP2

打撃や球速を
ワンランク上げる

筋力アップ

食トレはご飯も大切だがたんぱく質とビタミンが鍵

 「球速を上げたい」「飛距離を伸ばしたい」など、筋力をつけてパフォーマンスを格上げしたいという気持ちが食トレのモチベーションになっている人は多いだろう。そんな時、筋力トレーニングの傍ら、食トレだからとご飯ばかりを大量に食べるのは間違っている。

なぜならば、筋肉の材料となるのは肉や魚介、卵や大豆製品、乳製品に多く含まれる「たんぱく質」だからだ。これらの食材に含まれるたんぱく質はそれぞれに効果が異なり、消化吸収に必要とされる時間も異なる。いくら好きでも肉ばかり食べていると肉に含まれる脂肪分により体脂肪率が上がってしまうこともあるため、いろんな食材からバランスよくたんぱく質を摂取しよう。

また、たんぱく質の吸収をサポートするビタミンB群(緑黄色野菜などに多く含まれる)やビタミンC(フルーツなどに多く含まれる)の存在も忘れてはならない。筋力アップには、ウエイトトレーニング、良質でバランスの良いたんぱく質、ビタミンB群•ビタミンCの摂取が必要不可欠と覚えておこう。

STEP3

長丁場や夏の連戦を戦い抜く

スタミナアップ

夏の過酷な連戦を戦い抜くため炭水化物を味方につけよう

 高校野球の天王山は夏。しかし夏の戦いの相手は対戦校だけではない。猛烈な暑さや、過酷な大会スケジュールとも組み合って、しのぎを削る必要がある。だからこそ、夏の戦いでは野球技術以上にスタミナが大事になるのだ。そんなスタミナを作るのは「炭水化物(糖質)」である。

 炭水化物は消化吸収された後、グリコーゲンに変質し、肝臓や筋肉にスタミナ源となって蓄えられる。スタミナをどれほど維持できるかは体内のグリコーゲンの量で決まるが、ここで大事なのが筋肉量。筋肉が大きくなればなるほどグリコーゲンの貯蓄量も増えるため、よりタフになる。

ちなみに脳のエネルギー源も炭水化物なので、不足すると集中力を欠いてエラーや判断ミスを招く。スタミナはアスリートにとってガソリンのように重要なのだ。炭水化物の望ましい量は総摂取エネルギーの55〜60%。体重を増加させる必要がある選手は1食当たりどんぶりめし2〜3杯は食べられるようにしよう。消化吸収能力が低いタイプは小分けにして食べる回数を増やすと良い。

ご飯が食べ足りないのかも
筋グリコーゲンの蓄積がスタミナになる!
STEP4

積み上げたものを
台無しにしないために

ケガ予防・免疫力
アップ

不足しがちな栄養素ビタミンとミネラルに注目!

「たんぱく質」や「炭水化物」ほど知られてはいないが、大変重要な役割を果たし、かつほとんどの選手が必要量に足りていないことが多い栄養素が「ビタミン」や「ミネラル」である。

 ビタミンやミネラルは身体の機能を調整したり正常に保ったりする役割がある。なかでもたんぱく質や炭水化物の消化・吸収にはなくてはならない存在だ。例えば、たんぱく質の代謝にはビタミンB6が、炭水化物からエネルギーを作り出す時にはビタミンB1が必要になる。緑黄色野菜や柑橘系のフルーツに多く含まれるビタミンA•C•Eは風邪予防に効果的である。また、ミネラルにはカルシウムやマグネシウム、鉄分などさまざまな種類があり、それぞれ違った働きをする。

 ケガをしたり体調を崩したりすると、毎日の練習で積み上げてきたものが崩れてしまう。特に選手はハードなトレーニングで疲労が溜まりやすく、その分免疫力も低下しがちだ。不測の事態をできるだけ避けるためにも、ビタミンとミネラルは意識して多く摂ろう。

コンディショニング維持に必要な栄養素と食材
STEP5

食トレ効果を出すための必要条件

睡眠の質を高める

「成長ホルモン」分泌には入眠後、初の3時間が大切

表を見ると、入眠後3時間までに眠りが深く(ノンレム睡眠)なっているのと同時に、血中の「成長ホルモン」の濃度が一気にアップしているのがわかる。成長ホルモンは筋肉や骨の成長を助け、代謝をコントロールする大切なホルモン。このホルモンをしっかり分泌させるためには入眠後、最初の3時間でいかに深く眠るかにかかっている。寝る前のスマホは止め、食事は就寝の3時間前までに済ませよう。

眠りの深さと睡眠時間のグラフ
出典:NATIONAL GEOGRAPHIC「健やかな睡眠のカギを握る「メジャースリープ」とは」
記事掲載、国立精神•神経医療研究センター三島和夫氏の研究データより引用
食トレと相乗効果アップ

オフシーズンのトレーニング

筋力アップのために

 ウエイトトレーニングでは重たいものを回数多く上げるのが効果的。そのため、挙上回数は10回前後で設定し、その中で最大限挙げることができる重量を使用していく。ランニングは持久系から少しずつスピード系に移行し、全身持久力+スピード向上を目指そう。

持久力向上のために

 基礎体力•持久力向上を目指すので、ウエイトトレーニングは挙上回数を多く設定する。そのため、通常より少し軽めの重量を使用する。ランニングは距離の長いものを選択する。オーバートレーニングにならないようコントロールしつつレーニング頻度を上げていこう。

取材・文:古江美奈子 写真:筒井剛史
掲載内容に関しては制作時の情報となります。