デルメ食トレmagazine 第11弾(強豪校の身体づくり) 岡山学芸館高校
団結力ナンバーワンメンバーと
5年ぶりの夏の甲子園
佐藤監督が歴代ナンバーワンの団結力だったと語る3年生。春の敗戦から成長を遂げ、甲子園出場の切符をつかんだ。練習、トレーニング、食事管理において選手への意識づけを重視する指導方針と、夏でもバテない身体づくりの秘訣を探る。
1983年生まれ。宮城県出身。仙台育英高校では2001年の選抜大会で準優勝。城西大学卒業後、岡山県作陽高校へ。2013年に本校へ赴任し2018年秋から監督。社会科教諭。
「最後まで仲間のために」 3年生がみせた行動
「今年の3年生は僕が監督をしてきた中で一番のメンバー。みんなしっかりと自分の役割を全うしてくれました」。佐藤貴博監督は、甲子園大会後のミーティングでも3年生に対する思いを口にしている。岡山学芸館の部員数は県下でもトップクラスとなる100名程の大所帯。夏の大会前、27人の3年生のなかには、メンバーから外れる選手も多くいた。彼らは悔しさを胸にしまい最後までチームの一員として、メンバーが試合に集中できる環境づくりに勤しんだ。ベンチ入りした9人の下級生は、そんな3年生の背中を見て「自分たちがやらなければ」という覚悟を持ち試合に挑んだという。
今夏の岡山県大会。決勝を含む6試合の中で「ベストゲーム」と佐藤監督が振り返るのが3回戦。東海大相模時代はチームを4度も全国制覇に導いた門馬敬治監督と彼が率いる創志学園に、昨秋の大会は惜敗していたが、今年は違った。「考えてきた対策が何をやっても上手くいった」と話すように、満塁のチャンスで仕掛けたランエンドヒットが成功し2点を先制。6対1で勝利したことで、優勝に対する思いがチームのなかでより強くなった。
決勝の相手となったのは、春に一度敗れている関西高校。実はこの時の敗戦が学芸館を目覚めさせた。野球に取り組む姿勢を変えなければと、Wエースの3年、沖田幸大と丹羽知則が中心になってチームの意識改革を実行。決勝では沖田ー丹羽の継投で、関西打線を5安打に抑え4対3で勝利し、5年ぶりに聖地への切符をつかんだのだ。
迎えた甲子園大会では、聖カタリナ(愛媛)、掛川西(静岡)を相手に、2戦とも無失点で勝ち上がる。目標とするベスト8を前に神村学園(鹿児島)に敗れたが、チーム初となる2勝をあげ、甲子園ベスト8の夢は新チームへと託された。
野球を続けるために
身体づくりは必要不可欠
「身体をつくらないと勝負になりませんから、ウエイトトレーニングと食トレは甲子園を目指すうえで必要不可欠なトレーニングです。ただ食トレは試合に勝つためだけでなく、卒業後の選手育成にも重要です」と佐藤監督。入部前の選手には、できれば大学でも野球を続けてほしいと伝えているという。選手の将来を考えたとき、食トレは次のステージで戦える身体をつくるための投資でもある。卒業後、主力メンバーだけではなく多くの選手が野球を続け活躍している。その背景には、高校で培った土台が支えになっていると感じる。
一方で丈夫な身体は勉学にも有益だ。大学進学にも力を入れる学芸館では「野球の練習で勉強ができなかった」という言い訳をさせないため、テスト期間中を含む2週間は練習を短時間で終わらせている。国公立大学現役合格率90%を誇る普通科(スーパーVコース)には、部活動をしながら学ぶ生徒が多く在籍。なかには野球部の選手もおり、文武両道で国立大学を目指している。
食事以外では、低反発バットの導入を受け、ウエイトトレーニングに対する意識も高まった。トレーニング室には、ベンチプレスとスクワットの重量を計測し、貼り出して数字を可視化。メンバー入りに必要な基準も示すようになったという。
3年の夏は最高の状態で挑めました!
食事で心がけていたことは、たんぱく質が豊富な肉を多くとり、オレンジジュースと牛乳を毎日欠かさず飲むことでした。朝は主食に加えて、納豆とヨーグルトも必ず摂取。入部当初は食べ過ぎで体脂肪が増えましたが、食事のとり方を改善することで投球の質も向上しました。1年の秋頃から食トレの効果が表れ、練習中にバテることが減り、身体のキレも良くなりました。食事を意識し続けた結果、3年生の夏の大会前には体力的・精神的にも上向きに。お母さんの気合いの入った料理を食べると、試合に向けてのスイッチが入りました。
学芸館の選手たちは、寮生、自宅生、下宿生とそれぞれ異なる環境で食トレに取り組んでいます。自宅生は保護者が、寮生は寮食に加えて自分で補食や夜食を用意し、下宿生はすべての食事と補食を自分で準備しています。
今年は夏前の2カ月間、筋肉量が右肩上がりに良くなっていったことが印象的でした。特にメンバーに入れなかった3年生も、身体づくりにおいて各自の目標に向けて最後までやり切りました。「全員で甲子園に行く」という強い想いがチームの一体感を生み、甲子園2勝につながったと思います。
「足がつらない」のは
継続的な食トレの効果
甲子園大会期間中、学芸館には予選も含めて足がつった選手がいないことを紹介したネット記事が注目を集めた。正確に言えば、佐藤監督が就任した6年間、練習試合も含めた全試合で足のつった選手はいない。足がつる原因は暑さだけではなく緊張もある。ただ、つらないようにするためには日々の食生活が重要だ。
「食トレは一時期だけ頑張っても効果はありません。毎日の積み重ねが大事です」。
学芸館では保護者には年に一度、栄養セミナーを受けてもらい、選手には月に1回、管理栄養士を招いて食事指導に入ってもらっている。
「食トレは細かなことでも意識づけをすることが大切です。例えばコンビニで飲み物を買うなら、清涼飲料水や甘いカフェオレではなく、オレンジジュースや牛乳を選ぶ方がいい。日頃から生活の中のちょっとしたことにも気を配り、予防線を張ることで、試合で足がつらない身体をつくることができます。これをやれば足がつらない。節制してきた一つひとつの積み重ねがおまじないでもあるんですけどね。伝えておけばうちの子たちは守ってくれますから」。
秋の大会はすでに始まっている。「ここで間をあけずに甲子園にまた出場したい」と何度も口にする佐藤監督。甲子園2勝という実績を残した今年、3年生が見せた最後までチームの一員であることに誇りをもち、再び聖地を目指す。
苦手食材を克服し日ごとに大きくなっていく姿を実感!
Q.食事で心がけたことは?
A.お弁当はおかずを多めにし、夏など食欲が落ちる時期にはうどんや冷麺を持たせました。夜は寝るだけなので、体脂肪が増えないように脂質は控え、ごはんと一汁三菜、果物にしました。
Q.息子さんの食事の傾向は?
A.野菜が苦手なのでお味噌汁やスープなどに入れる工夫をしました。乳製品や果物も得意ではなかったのですが、食トレを始めてから食べられるようになりました。
Q.食トレをやっていてよかったことは?
A.日に日に身体が大きくなっていくのを実感しました。ケガの回復が早くなり、体調を崩すこともほとんどありませんでした。
文:永野裕香 写真:冨岡 誠
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