デルメ食トレmagazine 第11弾(強豪校の身体づくり) 兵庫高等学校
〝あと一口〟で広がる可能性
挑戦する癖が食事でついた
春夏通算5度の甲子園出場を誇るも、1966年春以降、甲子園から距離をおいていた兵庫高校。しかし、今夏は39年ぶりに16強へ割って入った。伝統校はなぜ〝復興〟を待ち望んでいた人々を熱狂させられたのだろうか。
1980年、兵庫県神戸市生まれ。長田高校、筑波大学出身。淡路高校、伊川谷高校で部長と監督を歴任し、2021年から兵庫高校で指揮を執る。保健体育科教諭。
成功体験で前向きに限界は超えられる
多くの人々がずっと心待ちにしていた。今年の夏、兵庫高校が選手権兵庫大会を勝ち進むと、大型バス4台の応援団が地方球場にかけつけ、多くの観客でスタンドが埋まった。平日は6つの部活動が学校のグラウンドを共用し、練習時間は2時間弱。下校途中に塾へ通う選手もいる。それでも兵庫の野球部が着実に力をつけてきているのはなぜか。
川端太一監督の就任時、同校の生徒たちは道が険しいと分かると目標を下方修正してしまうことが少なくなかった。「困難に直面しても休息をとりながら、地道な努力を続けられる人に育ってほしい」と願う指揮官は、選手が自信を得られる方法を模索。その方法の1つとして、2023年、部員たちが興味を持っていた食トレを開始した。すると複数人の振り返りノートに「自分で限界を決めていたが一歩進んでみたら意外といけた」という内容が書かれていた。川端監督は「食事で身体が大きくなるのも嬉しかったけれど、野球に対して前向きになってくれたのがとにかく嬉しくて」と頬を緩めた。1日に食べたご飯の量、体重計に表示される数値などが日々増えていくことで、まだ伸びしろがあること、やれば成長できることに選手本人が気づき、甲子園出場を目指すための〝気力〟をつけることができたのだ。
柵越えホームランが打てるように!
中学のときは普通の量でも残してしまうほど食が細かったのですが、食トレを始めてから350gの白米を食べ切れ、今では600gを完食をしています。3年生になると急に打球が飛ぶようになって、人生初の柵越ホームランも。早いうちから食生活の改善などいろんなことに取り組み、やり切れば、最後の夏がどんな結果になろうとも満足できると思います!
兵庫高校は勉強をしに入学してきた選手たちが、野球に対しての意欲を高め、勝つために楽しく食トレに取り組んでいる学校です。そのため、食べることに興味を持ってもらうこと、食べることが嫌にならないよう気をつけながら指導しています。
兵庫の良さは、特定の選手だけではなく保護者の皆さんも含めて“全員で”頑張れるところ。食べられた量や体重を気にしながらお互いに高め合えています。
106年続く連続出場を
途絶えさせないために
なぜ食トレが効果的だったのだろうか。川端監督は「身体を動かすトレーニングは手を抜くことができますが、食トレは手を抜けず、本当の意味で限界を超えることができるんです」と語った。例えばダッシュのとき、指導者から「あと1本追加や!」と発破をかけられても、疲れ切った顔で周囲を欺けば、スピードを落として走ることができてしまう。しかし、表情による演技は食トレに通用しないのだ。
「お腹いっぱいで苦しくてもあと100g、あと一口を入れないといけないし、それがずっしりと身体にくるんですよ。各自がこなすべき量が決まっていて、それを誤魔化すことができない。食トレで、それまで自分が考えていた限界は超えられるということを経験したら、ダッシュでも『あともう1本行ける!』などと、選手が自分から進んで限界超えにチャレンジするようになっていきました」。
なかなか勝てない世代もあったが、同校には代々大切にしてきたことがある。夏の地方大会の〝皆勤校〟として連続出場の記録を途絶えさせないことだ。
前身の第二神戸中学校(神戸二中)だった1915年に兵庫県代表として「第1回全国中等学校優勝野球大会」へ出場してから、不祥事や部員不足を起こすことなく、記録を更新してきた。これまでの先輩たちに劣らない免疫力の高さ、身体の強さは、同校の球児にとって必要条件なのだ。食トレで心身を強くし、困難を乗り越えた先に〝甲子園〟というゴールがある。そう信じて、これからも栄光の記録を繋いでいく。
献立表を味方にストレスのない食事づくり
Q.理想的な栄養バランスを知ってから変わったことは?
A.砂糖が多いものはとらないなど、息子も教わったことを意識していましたし、私もカルシウムやミネラルをバランスよくとれるように意識して買い物するようになりました。
Q.たくさん食事をつくることは大変でしたか?
A.毎月いただく献立表が心強くて、我が家なりのアレンジも加えながらストレスや負担を感じずに料理することができました。足りない栄養素を補う「強化食」も心の支えになりました。
文・写真:喜岡 桜
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